明治20年代、官僚たちのたたかい
膨大な一次史料に分け入り、近代政治史に新たな視角をもたらす画期的研究

「皇室御料之仕事を念仏唱ひツヽ拝見仕、十八年農商務ヲ去リシ時ノ宿志を遂け度」(品川弥二郎)

明治維新により新政府の核として存在の重要性が一気に高まった皇室だが、それを支える財政基盤は不安定で、常に政府に依存していた。そこで明治10年前後、皇室財政を支えるための独自財源が模索される。そのひとつが、山林や鉱山などで形成される不動産「御料地」であった。しかし、土地という「モノ」であるがゆえに、そこに担わされる役割と扱いをめぐり、伊藤博文、松方正義、山県有朋などを巻き込み、政府と宮中、政治家と官僚との複雑で苛烈な政治が発生した。本書は明治20年代を舞台に、御料地の設置から払い下げなどの「処分」までを、膨大な一次史料の分析をもとに詳細に分析、通覧する。その中心になるのは、長州勤王の志士として活動し、維新後は官僚、政治家となった品川弥二郎。これまで光のあたらなかった明治の「もうひとつの政治」を初めて明らかにする、画期的研究。

皇室財産の政治史: 明治二〇年代の御料地「処分」と宮中・府中
著者:池田 さなえ
人文書院
体裁:A5・444ページ
定価:本体6,800円+税
ISBN:9784409520765